あなたの家の近くには、雑草だらけの空き家や空き地はありますか?そこは誰かが定期的に草刈りしていますか?あなたが空き家や空き地の所有者の場合、草刈り等の管理はどうしていますか?
草刈りするよう指導を受けた話
過日、親族A宛にB市から連絡があった由。用件は【あなたの所有する土地の除草をして下さい】。
「Aの所有する土地」は、Aが亡父から相続した土地。Aは県外在住のため、相続後の管理はAの母がしていました。Aの母が、毎夏季に現地B市の人材センターに草刈りを依頼していたのです。
ところが今夏、Aの母が体調を崩してしまい、人材センターに草刈りの依頼ができずにいました。それで現地は放置状態となり、雑草が繁茂してしまったようです。
その状況に困った隣接地の住人がB市に苦情を言ってきた由。B市の担当者が雑草地の登記情報を調べて、所有者であるAに草刈りの依頼をしてきたのでした。
現地の人材センターに草刈りを依頼した
AはB市の案内に従って、人材センターに草刈りと除草剤散布を依頼。夏場は草がすぐ伸びるので、2か月後にも同様の内容で予約したそうです。今後の定期的な利用も検討中とのこと。
草刈りしてもらえるよう相談した話
さて、今度はウチの隣の雑草地。広大な雑草地には1mを越える雑草が生い茂っています。そこから虫たちがどんどんやってきます。数本の果樹は立ち枯れ、傷んだ落果からは臭いが…。
登記情報を調べれば、隣の雑草地の所有者は判るけど、私が調べるのは気が引けます。なにか手立ては無いかな?と所在地C市のサイトをチェックしてみました。
自治体の環境担当部署に問い合わせた
C市には環境保全の窓口があり、雑草地の情報を受け付けていました。そこに問い合わせてみると、「周辺環境に支障をきたすほど繁茂しているのなら、所有者へ草刈りを促す」とのこと。残念ながら電話だけでは詳細が伝わらなかったので、窓口を訪ねることに。その際、公道上から撮影した現地の写真を持参しました。
それから1週間後、C市の担当者が現地確認の報告をくれました。担当者によると、登記情報をもとに、ウチの隣の雑草地の「所有者D」に連絡し、草刈りを依頼した由。そして報告から3日後、草刈りが実施されました。実際に草刈りに来たのは所有者ではなく業者さんのようでした。
なぜ空き地が雑草地化してしまうのか
今回の件で相談したC市の担当者によると、上記の2例のような状況は増加の一途だとか。
どちらにも共通するのは、「相続された物件」であること。そして「物件の所有者による管理が行き届かない」という状況です。
所有者が遠方にいて管理できない
「親族A」は県外在住。ウチの隣の「所有者D」も、遠方に住んでいるとのこと。土地の所有者本人が定期的に草刈りに通うのは距離的にも難しそうです。
土地が細かく分けられて管理がまとまらない
C市の担当者によると「所有者D」は複数だったため、確認や連絡に時間を要した様子。詳細は聞きませんでしたが、どうやら相続時に子供数人で分けられていた模様。見かけは一つの土地でも、こまぎれに所有者が違うのなら、草刈りの手間を負いたくない人もいるかもしれません。
近隣住民にできること
雑草地が不衛生で防犯面の不安があっても、そこが「私有地」であれば、近隣住民が勝手に草刈りや除草剤を撒いたり、無断で片付けたりはできません。
自治体に相談する
どの自治体にも環境関連の部署はあります。自治体によっては、雑草等の除去に関する条例が設けられていることも。しかし条例があったとしても、
- 「自治体から所有者に手入れを促し、業者の利用も案内する」
- 「相談者が所有者へ連絡し、当事者同士で解決を」
というように、対応は自治体によって違います。
前項2件の例で、間に立ってくれたのは、空き地が所在する自治体。直接的に解決してくれた訳ではありませんが、中立の立場で相談を受け付けてくれました。自治体から手助けを受けられた有難いケースと言えそうです。
管理会社に連絡する
空き地や空き家の前に「管理○○不動産/電話○○」と表記された看板が立てられていることがあります。物件の問い合わせ窓口でもあり、何か問題が起こっている時の連絡先でもあります。
基本的に所有者が現地の手入れをするのが原則ですが、管理会社が所有者に代わって草刈り等を請け負っていることも。雑草で困っている場所に看板があれば、連絡してみては如何でしょうか。
改正民法233条は「雑草」に適用できるのか(追記:2024年1月)
隣の土地の植物が、所有者の敷地に侵入してきたときに対応できる法律は、一応あります。ただ、植物を指す言葉は【竹木】と書かれてあります。竹を雑草類と解釈できるのかは分かりません。
以前の民法233条によると「所有者は、越境してきた根を切ることはできるが、枝は隣の所有者に切ってもらうよう依頼する権利がある」だけで、強制はできません。勝手に切ると器物損壊になりかねず、どうしても切ってほしい時は、隣の所有者に対して訴訟を起こさなければなりません。
改正後の民法233条(2023年4月1日施行)によると、隣の土地の竹や木の枝が所有者の敷地に越境してきた場合、「一定の条件下において、所有者自らが越境してきた竹木を切ってよい」ことになりました。「一定の条件」を簡単にまとめると、
- 余裕のある期間で切るように依頼したのに、隣の所有者は切らなかった
- 隣の敷地の所有者を特定できなかった
- 災害等で枝が折れそうなとき
参考:法務省 【令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント】
PDF資料が開きます。29ページ「越境した竹木の枝の切取り」が参考になりそうです。
やむを得ない状況や緊急時の竹木を指すため、雑草類への適用は分かりません。今のところは前項で挙げた「自治体に相談」「管理会社に連絡」することが現実的です。
所有者にできること
所有者は自身の所有地を適切に管理しなければなりません。管理の不行き届きが原因で、不衛生な状況や害虫被害、不法投棄や事故など、他者に損害を負わせた場合、所有者が損害賠償を問われることがあります。
人材センターや業者に管理を任せる
所有する空き地や空き家を「手放さない」が、手入れが難しい場合は、草刈りなどの外構作業を請け負うサービスを定期的に利用すると良いでしょう。各地の人材センターや各種業者などに依頼するのも現実的な方法です。
「草刈り」「料金」で検索してみると、様々な業者さんの草刈りサービスの記事が出ます。気になる料金ですが、100坪で5万円前後のプランをよく見かけました。前出の親族Aの場合は100坪で3万円だったとのこと。もちろん地域や業者ごとに内容も料金体系も異なると思われます。
不動産会社に登録し管理を任せる
管理が難しい所有地を「売りたい・貸したい」と考えているなら、外部に管理を任せてみては如何でしょうか。物件としても手入れが行き届いていたほうが印象も良いものです。空き家や空き地、耕作が難しい農地なら転用を考えて、不動産会社/農業法人に物件登録し、事務管理と併せて「現地の手入れ」も委託すると良いでしょう。
- 追記(2022年12月): 投稿当時(2019年7月)下記の参考例にて「親族E」と表記していましたが、私のことです。動きがありましたので再編集し追記します。
参考までに、私の所有地のケース。こちらも「相続」した土地。亡父から農地の1区画を相続したものの、自力で耕作は不可能。しかし農地としては良好です。雑草等で荒れてしまうのは残念なので、今のところは現地の「農業法人」に耕作と管理を委託。私は、この農地1区画を「遠地に住む子に相続するのは難しい」と考えています。
過日、相続した農地を売却しました。
農地の扱いに詳しい不動産会社に物件登録し、宅地に転用しての売却を試みましたが、叶わず。所在地の農業委員会に相談し、農地として売却しました。
相続が雑草地問題の原因の一つという現実
この記事を書いたのは、親族や自分自身が雑草地に困惑したことがきっかけです。それにしても、雑草地問題の原因の一つが相続とは、なんとも忍びないものです。皆さんの近隣の雑草地が気になる時、ご自身の所有地の管理に困った時、この記事が多少の参考になれば幸いです。
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