維持が難しい不動産を手放す・相続した農地を売却

過日、亡父から相続した農地(水田)を売却しました。農地を売却する場合、宅地とは違った手続きが必要です。

父から相続した農地

私の実家は農家。父がまだ元気な頃、道路から近い農地を新たに取得した由。他の農地と同様に耕作していました。その農地は都市計画区域外、ゆくゆくは「家も建てられる土地」として子供に遺そうと考えたようです。

時は流れて父は他界。私は約100坪の農地を相続することに。親心だからと受け継いだものの、私に耕作は無理。所在地の農業委員会に相続の届け出後、農業法人と契約、耕作を委託しました。今後のことを考えると、県外に定住した私の子供に、この農地を相続するのは無理。時期を見て売却することにしました。

農地か、宅地に転用か

農地として見た場合、100坪は狭いです。農地は10アール単位で表記するので、換算すると約3.3アール。農地としての評価額は、立地と現地の質で評価されます。圃場整備から外れた旧来の位置ですが、水路と畦道はあるので農業機械は入れます。農業法人に耕作を委託したことで荒廃する事もなく、狭いながらも毎年一定の収穫量はあり、水田としての管理も良好です。

宅地として見た場合、100坪は広いほうです。しかし、電気や水道、接道などのインフラは無し。家を建てるなら自前で整備が必要、元が水田のため土質の改良も必要です。そのうえ、私の農地と道路との間には、一軒の住宅があるのです。開発等で別方向から接道が叶わない限り、宅地としての活用は難しい。

農地で売るか、近隣開発に乗じて転用して売るか思案しつつ、譲渡所得税の税率が下がる5年が経過するのを待ちました。

相続した農地を売却(私の場合)

近隣に開発の気配は無し。自腹でインフラ整備は無理。隣接の一軒家にも諸事お伺いするも興味無しとの事。宅地に転用しての売却は諦め、農地として売却することに決めました。大まかな流れは以下の通り。

  • 農業委員会に相談
  • 農業法人との耕作委託契約を解約(私の場合)
  • 農業委員会に売却の許可申請
  • 土地の売買契約

農業委員会に相談

まずは所在地の農業委員会に相談。電話で問い合わせ、農業法人に委託契約中の農地を売却したい意思と、買主の紹介を依頼できるか尋ねました。有難い事に、地区の農業委員さんが農家さん達に声掛けして下さる由。約2ヶ月後、購入可能な農家さんを紹介頂きました。感謝。

農業法人との耕作委託契約を解約(私の場合)

次は農業法人との委託契約を解約。書面提出のみで完了(2カ月前の相談で確認済のため)。

農業委員会に売却の許可申請

耕作委託の解約と並行して、農業委員会に売却の許可申請。農地のままで売却するので「農地法第3条の規定による許可申請書」を作成し、必要書類と共に農業委員会に提出しました。必要書類は以下の通り。

  • 第3条の規定による許可申請書(譲渡人と譲受人の連名(直筆・押印)、許可後売買)
  • 農地の登記事項証明書
  • 公図・耕作証明・住民票(この3点は、私の場合は耕作委託の履歴があるので不要)

約1カ月後、農業委員会から売却の許可が出ました。

土地の売買契約

いよいよ土地の売買契約。手続き会場は、買主様が希望された農地取引の実績ある不動産業者の店舗を選択。不動産店長の立会いのもと、司法書士・売主・買主が同席。売買契約書を交わし農地の譲渡契約が成立。同時に代金の決済。多くの方々の手助けにより、無事に売却することができました。

※ 土地の売買なので、印紙代や仲介手数料など、売買価格に応じた経費が掛かります。

参考までに、私の農地の売買価格は100坪(約3.3アール)で10万円。難しい立地としては上々です。

相続した農地を売却

農地のイメージ 写真AC

一般的な農地の売却方法

農業者ではない人でも相続等で農地を所有することがあります。耕作できない農地の売却をお考えの方は、まずは所在地の役所の農業委員会に相談して下さい。立地・現況・売却方法により、適用される法律や許可者を確認する必要があります。

一般的な農地の売却方法は2種類。

  • 農地として売却
  • 農地を宅地に転用して売却

※ 「農地法」の売却に関する条項を理解しておく

「農地法」とは、食糧を生産する農地を守る法律です。この国の食糧自給を守るために、農地が農地以外に勝手に使われないよう規制が掛けてあります。売却や使用目的の変更においては、以下の規定が設けられています。

  • 3条許可:農地を農地として売却する。
  • 4条許可:農地の所有者自身が農地以外に転用し使用。売却はしない。
  • 5条許可:農地を農地以外(宅地等)に転用して売却する。

3条許可は「農業委員会」の許可を要します。4条許可・5条許可は「都道府県知事または指定市町村長」の許可を要します。

農地として売却する場合

農地として売却する場合、購入できるのは「一定の条件を満たした農業者」「農業参入者」。具体的には、近隣で農地を所有・耕作する農家、親族の農家、農業委員会の許可を得た新規営農者などです。

買主を見つけるのは大変ですが、農業委員会の許可が下りたあとは、売買契約を締結し代金の決済をして完了です。

農地を宅地に転用して売却する場合

宅地に転用できれば、農業者以外でも購入が可能です。ただし、農地を宅地に転用するには「立地基準」「一般基準」を満たさなければなりません。

宅地に転用後は、不動産業者を通して広く買主を募集できます。買主が見つかれば、通常の売買契約を締結し代金の決済をして完了です。

農地の売却は余裕のある日程で

農業者ではない個人で、相続で得た農地の売買をするのに慣れている人は少ないと思います。農業委員会への問合せから始まり、各種申請から許可が出るまで、かなりの時間が掛かります。早めに着手し、余裕のある日程で。

売買契約については、農地法に詳しく農地取引の実績のある地元の不動産業者さんに依頼することをお勧めします。登記の手続きをして下さる司法書士さんの紹介も期待できます。

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