バラの挿し木の方法3種・挿木苗が芽吹いて嬉しい春

昨夏に作った鉢バラの挿し木が芽吹いて嬉しい春。この挿し穂は発根に時間が掛かり心配したけど、枯れる気配はなかったため、淡々と水替えを続けたもの。諦めなくてよかった。

久しぶりに作った挿し木が芽吹いた

挿し木は、自宅で楽しむ分だけ

先に大事な事を書いておきます。皆様ご存知のことですが、

「挿し木は、自宅で楽しむ分だけ」他者に譲渡/販売はできません。

一般に流通している植物の大半は、育種家及び生産者により品種登録されています。育成者権と呼ばれる特許期間が切れても、商標登録などの権利関係は複雑に存在します。

購入したバラの控えを確保するために挿し木する

購入したバラが順調に育つとは限りません。天候や虫害など思わぬ事態で枯れることはあります。私の場合、春の花後の枝/夏剪定で切った枝を使って、控えの挿し木を作ります。

バラの挿し木に適した時期

挿し木に適した時期は、大まかに年に3回あります(※年に2回という解釈もあります)。

  • 初夏(5~7月)緑枝挿し
  • 初秋(9~10月)緑枝挿し
  • 冬(11~1月)休眠挿し

「緑枝挿し」は、春の花後の枝や、夏剪定で切った枝を使います。成長期の枝なので約1カ月ほどで発根します。

「休眠挿し」は、バラの冬の休眠期の頃に、冬剪定で出た枝を使います。低温の時期でもあるので、発根するのに2カ月位と時間が掛かります。

バラの挿し木の方法

バラの挿し木は、根が出やすい状態に切った枝を、挿し床に挿して発根させます。個人の家でも簡単な方法で出来ます。

挿し木の方法は多様で、資材の配合や道具など、人によって様々な工夫がされています。私が知っているものだと、基本的な挿木の方法は、おおむね3つ。

  • 土挿し
  • 水挿し
  • ロックウール挿し

どの方法であっても、雑菌が繁殖しないように気を付けます。根がある程度伸びたら、4号くらいの植木鉢に鉢上げします。

土挿し

土に挿して発根させる、基本の方法です。用土は無菌に近いものを使います。よく使われるのは、「赤玉土小粒」「鹿沼土小粒」「パーライト」「バーミキュライト」「川砂」等です。混ぜて使っても大丈夫です。調合済みの「挿し木用の土」も市販されています。

鹿沼土は酸性で無菌に近いけれど、酸性が苦手な植物には難しいことも。パーライトとバーミキュライトは無菌で安心ですが、粒子が軽いために挿し穂が不安定になりがち。赤玉土や鹿沼土と混ぜると良いでしょう。

川砂は祖父が庭の花木を挿し木する時に使っていました。(祖父は私にバラの剪定枝を与え、余った川砂で挿し木の真似をさせてみた。すると運よく発根。これが私のバラ挿し木の最初です。)

鉢の大小は問いません。浅いプランター等に数多く挿してもいいし、3~4号くらいのポリポット等に1本ずつ挿してもいいです。割り箸等で用土に深さ5cmほどの穴をあけて、切り口を痛めないように挿します。

  • 切り口にルートン等の発根促進剤を塗すと根が出やすいです。とはいえ個体差のあることで…。私の場合、ルートンをつけての土挿しは失敗(涙)つけ過ぎたのでしょう。

風通しの良い日陰に置き、挿し穂と用土が乾燥しないよう注意。水切れ防止に、ひと回り大きな器に浅く水を張って、そこに挿し穂の鉢やポットを置き、底面吸水させます。この底面の水は時々交換します。上から水を掛けてもよいですが、挿し穂が倒れないよう霧状の散水で。

見た目では、いつ根が出たかは分かりません。枝が瑞々しさを保っていれば生きているので、気長に待ちます(抜いて確かめたりしないこと)。

プランターや大鉢に挿していて根が確かめられない場合、元の葉があった付け根部分から新芽が出るのが目安。1本ずつポットに挿した場合、底から根が出てくるのが目安。5cmくらいに伸びた根が数本あれば、1株ずつ鉢上げして大丈夫です。

水挿し

花瓶やコップなどで、水に挿して発根させる方法です。土を使わないので屋内で管理できます。

水は切り口全体が浸るくらいでOK。水や器にカビが生えないように、こまめに水替えをして、容器も時々濯ぎます。発根したら、用土に鉢上げします。

水挿しで出た根は、鉢上げが難しいことも。もっさりと十分に発根できていれば大丈夫です。

ロックウール挿し

人工の鉱物繊維で出来たロックウールに挿して発根させる方法です。土を使わないので、水挿しのように屋内で管理できます。

園芸店等で見かけるロックウールは、3~10cmくらいに四角く成型してあります。そのままでも使えるし、自分の使い易い大きさに切り出すことも容易です。それ自体は無菌ですが、繊維の間に雑菌が溜まることはあるので、通水はしたほうがよいです。

ロックウールで発根させると、根が繊維内に伸び張ります。ロックウールは土に混ざっても問題無いので、ロックウールごと用土に埋めて鉢上げできます。

バラの挿し木の作業手順

バラの挿し木の方法は多様です。作業を始める前に、挿し木の方法を決めておきます。好みの方法を決めたら、挿し床などの必要な資材のご用意を。

挿し穂を採取する

挿し穂は今年伸びた若い枝から採ります。先端は使わず、中間の部分を使います。緑枝挿しは太さ5mm前後、5枚葉が2~3枚ある部分を 10~15cmほどに切って挿し穂にします。休眠挿しは葉が無い時期なので、やや太めの枝を使います。

葉は一番上を残し、下の葉は除去。残した一番上の葉の小葉も減らします。1葉あたり小葉2枚でよいかと。小葉自体が大きい時は、その小葉を半分に切ることも。

挿し穂の切り口は、水を吸い上げる面積が広くなるよう斜めにカットします。切れ味の良い園芸ナイフ、新しいカッターナイフ等で、キレイな切り口になるように切ります。

挿す前に水揚げする

挿す前にしておく作業は「水揚げ」。切り口を乾燥させないため、挿し穂に充分な水分を吸わせておくための大切な作業です。だいたい1~2時間ほど、水に挿して吸水させます。この時の水は水道水で十分ですが、メネデールなどの活力剤を規定の濃度で混ぜておいても良いです。

挿し床に挿し木する

水揚げしておいた挿し穂を、挿し床に挿します。前項で紹介した3つの方法だけでなく、自宅の置き場所や使う資材の具合で、様々に工夫されるといいと思います。

挿し穂の鉢上げ

挿し穂が発根したら、4号くらいのポリポットやスリット鉢などに鉢上げします。

用土は、土挿しで紹介した無機用土、または肥料分控えめのバラ用培養土を。用土に珪酸塩白土など根腐れ防止剤を混ぜておくのもよいです。

鉢上げ用の鉢に、水をかけて湿らせた用土を半分くらい入れて待機。挿し穂の根が切れないように鉢に据え、あと半分の用土を足して、たっぷり水やりします。そのあとに既定の濃度に希釈した活力剤を与えるのもよいです。

置き場所は、明るい日陰に。直射日光を避けます。肥料は、新芽が展開するまで不要です。

方法はどうあれ、成否を分けるのは、「きれいな切り口を守る」「挿し床に雑菌を溜めない」。

久しぶりにバラの挿し木を作ってみた(2022年、ウチの場合)

2016年以降、購入した鉢バラの控えとして挿し木を始めました。最初は土挿し。好奇心に負けて、根が出たか見たくて挿し穂を抜いてしまう。結果、全滅。我ながら残念な人です。

その後、いくつかの挿し木の方法を試し、私が気に入ったのは「ロックウール挿し」。屋内で管理でき、切り口がロックウールで保護され(個人の印象)、根の出る様子も目視できます。

2021~22年に購入したバラ3種を使って、久しぶりに挿し木を作ってみました。

ロックウール挿しの道具を準備(ウチの場合)

ウチで用意したロックウール挿しの道具は以下の通り。「根が出るところを見たい/楽に水替えがしたい」という私の好みに合わせた、面倒くさい仕様になっています。

  • ロックウール(3cm角)
  • 容器(浅いもの、透明が良い)
  • トゲシート(小動物忌避シート)
  • 水、活力剤
  • カッターナイフ、カット台
  • ボウル、計量カップ、ジョウロ
  • 剪定ハサミ、工作ハサミ
  • タコ糸、つまようじ、割り箸

挿し木の道具(私の場合)

挿し穂を準備

花後の枝から挿し穂を採取、水を張ったボウルに漬けて待機。挿し穂の下端を、カッターナイフ(良質な園芸ナイフが理想)で斜めにカット。カットした挿し穂は別の容器で水揚げ。

バラの挿し穂を準備

水揚げ完了までに葉を減らしておく(1本あたり2枚くらい、大きい葉は半分にカット)。

ロックウールで挿し床を作る

挿し穂の水揚げ中に、挿し床を準備。3cm角のロックウールを水に浸す(乾燥状態だと粉が散って面倒/挿し穂の水分を保つため)。下半分がトゲシートの丸い部分に入るように、カッターナイフで角を落とす。

ロックウールで挿し床を作る

丸く細くなった部分の挿し穴を、つまようじ等で少し広げる。ロックウールの片側面に、カッターで切り込みを入れる。

挿し穂をロックウールに挿す

切り込みを入れたロックウールに挿し穂を挟む。斜めにカットした先端部分が、ロックウールの細い部分に収まるようにする。ロックウールを閉じ、2か所をタコ糸で結んで、挿し穂を固定。

挿し穂をロックウールに挿す

挿し穂を固定したロックウールを、トゲシートの丸い部分に挿し、容器に置いて水を張る(この方法だと、複数の挿し穂に手を触れずに一度に水替え作業ができる)。水位は、ロックウールの細い部分の半分の位置。挿し穴に気泡が入っても大丈夫。

トゲシートごと持ち上げて、こまめに水替え

容器に水を張ったら、直射日光の当たらない場所に置き、週に2~4回水替え。水替え時、トゲシートごと持ち上げて、濯ぎと通水。時々、張る水に活力剤を混ぜてみました。

シートごと持ち上げて、こまめに水替え

約3週間でカルス出現。早ければ約4~5週間で鉢上げできるくらいに根が伸びるのだけど、今回の挿し穂は根が伸び出るまで3カ月かかりました。根の長さは約3cmほど。もう少し伸びるまで待つか迷ったけど、鉢上げすることに。

根が伸びたら鉢上げ

鉢は4号スリット鉢、用土は赤玉土小粒を使用。赤玉土小粒は水で濯いで微塵を除去。鉢底に土留めの水切り網を敷き、水分を含んだ赤玉土を半分ほど入れて待機。

挿し穂を固定していたタコ糸を除去し、ロックウールごと挿し穂を鉢に据える(根を切らないように注意)。ロックウールが隠れるまで用土を足して、水を掛けて挿し穂を安定させる。

ロックウールごと挿し穂を鉢上げ

鉢は直射日光の当たらない風通しの良い場所に置く。1ヶ月後から日当たりの良い場所に移動。毎日水遣りし、芽吹きまで用土が乾かないように注意(赤玉土は乾くと微塵になり水はけが悪くなる)。

鉢は風通しの良い日陰に置く

鉢上げから4ヶ月後の早春、芽吹きが始まりました。葉が展開したら、バラ用培養土を使って5~6号鉢に鉢増しします。

合計8本挿して、3本が発根

6月にスムースベルベットを4本(鉢上げ用土は赤玉土小粒)。9月にパパメイアンとブルームーンを2本ずつ4本(鉢上げ用土は赤玉土小粒と鹿沼土小粒の混合)。

結果、スムースベルベットが2本、ブルームーンが1本、発根しました。

5本の失敗の原因は、切り口から雑菌が入ったためでしょう。

雑菌が入って傷んだ挿し穂

今思えば、私の手指の力が弱っていたことも原因かも。挿し穂のカット時、カッターを持った手元が不安定に。それで切り口が荒れてしまったのかもしれません。

今後は手元の株を維持

ブルームーンは鉢で1~1.5m位で育てられます。しかしスムースベルベットは、ツル性の大型種。スムースベルベットの花は大好きですが、今後の世話を考えると、えらいことになったな…と。

ベランダで大型種を3株となると、置き場所や仕立ての問題が。1株はツルを伸ばしてやり、2株は切り詰めながら株丈を低く保つ、とか。

挿し木はこれで区切りをつけます。控えを確保できなかったパパメイアンは、今ある株を大事に世話していきます。

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