引越しを決めた理由は、夫の転勤だけではありませんでした。約1年前から義母の様子に異変が現れていたのです。健診で指摘されたのは「前頭側頭型認知症」でした。
家族に起きた異変
義母は働き者。仕事は調理師、定年まで勤めました。個性的な性格で困惑することもありましたが、頑張り屋さんなところは尊敬していました。
料理をしなくなった
夫の実家へは年に3度くらい訪問。義母はその度に、食べきれないほどの手料理で迎えてくれました。それが昨年の春頃からスーパーのお弁当を用意してくれるようになったのです。私達は呑気にも「頑張り過ぎのお義母さん、少しは力を抜けるようになったのかな」と、安堵したものです。
SOSの電話
2018年10月、義母から私の携帯に着信。何やら混乱した口調で「車検代が払えない。運転が怖い。車を廃車するので買物が不便になる。」尋常ではない感じ、次の週末、様子を見に夫と実家へ。
約4か月ぶりの訪問、まず義母の痩せ過ぎた姿に驚愕。言葉もなんだか険しい。冷蔵庫の中は食材がぎっしり。義父は元気で、室内はそれなりに綺麗。生活は何とかなっているものの、義母の様子には違和感を覚えました。
同居を急ぐ
これまでに何度か同居の話はしていました。私の膝が悪いこともあり、病院と介護施設が豊富な、当時の私たちの居住地に来てもらう形で検討していたのです。しかし両親は「まだ大丈夫」と先延ばしにするばかり。心配だけど元気だからいいか、と深刻にならずにいました。
ところが実際に目にした両親の様子は、放ってはおけない状態。私達が車で通うサポートは距離的にも安全面でも危険。夫と話し合い、同居を急ぐことに。見るからに弱った義母が、見知らぬ市街地に適応するのは無理そう。かといって実家での同居は手狭過ぎるし、夫の通勤に不便。
ならば、異動の話のある地域に引越して呼び寄せよう、という結論に。その地域は両親の出身地でもあり馴染めるだろうし、病院と介護施設も多い、という判断。物件を探しながら、両親の様子も気にかけ、目まぐるしく日々は過ぎ、春の連休頃になんとか転居と呼び寄せを済ませました。
呼び寄せての同居は苦肉の策
「親を呼び寄せて同居」というと、何だか親孝行っぽい印象があるかもしれません。しかし現実は、そんな和やかな事ではなかった。
当時の私達の居住地と、夫の実家の距離は、高速道経由で約1時間半。近い?という印象は甘いです。連続して問題解決に通うと大変疲弊する。疲れがたまると車の運転も危険。
身も蓋も無い表現をすると「至近距離に居てくれたら、何かあっても直ぐに対処できる」ということ。同居で起こり得るトラブルなんて織り込み済みです。
健診に申し込み
同居が始まると、義母の異変がはっきり分かってきました。調理師だった人が、料理が出来なくなっている。話し方は一方的で言葉もキツく、他者からの話は聞いていない。計算や物覚えや受け答えは普通にできるのに、私達からの気持ちが伝わらない。なんとも不可解です。
そこで、自治体で行っている「物忘れ予防の健診」を利用することに。この健診は夫が見つけて勧めてくれたもの、義母も素直に行ってくれると思いました。
思いがけない結果
健診当日、義母は「健診なんて知らない、あなたが出掛ける日でしょ?」と言い張る。「一緒に行くと話し合いましたよね」と言うと、「私はボケてないから行かない!」と激昂。ひるまず「予防ですから気楽に。健診に行って、“私は元気”と言いましょう」と宥めて連れ出しました。
健診会場では始終落ち着かず「私は元気、だから帰る!」とスタッフさんを困惑させる。看護師さんや先生方が応対して下さり、どうにか健診メニューをクリア。そして先生の1人が、待機場所で待っていた私に、思いがけない事を伝えて下さいました。
「お義母様は「前頭側頭型認知症」の可能性があります。早めに頭のMRI検査を。いままで大変だったでしょ?」そして「健診では確定できないので、今日は本人に病名は伝えません。まずは、かかりつけ医を決めましょう。そして、精密検査ができる病院あてに紹介状を書いて貰って行って下さい。私のいる病院でも受け入れますよ。」同行の私のことまで気遣って頂けるなんて…有難い事です。
健診終了後、帰りの車中でも、義母は「私は何とも無いのに!」とお怒りの様子。とにかく私は平常心を保って運転に集中するのみでした。
介護認定を申請
義母の不可解な言動は、日に日にエスカレートしていきました。前日にも買った食材をまた買おうとしたり。草取り中に雨が降ってきても、ずぶ濡れになりながら続けたり。
「心配」しても、義母には全く伝わらない。もう自分達の気遣いだけでは難しいと感じ、自治体の相談窓口を利用することにしました。
地域包括支援センターに相談
助けを求めたのは「地域包括支援センター」。電話と対面で何度も利用、“義母の様子がおかしい”という相談から聞いて頂けて、心強く有難かった。
回を追うごとに深刻度が増したため、ついに介護認定を申請することに。要介護認定の申請用紙を頂き、書き方も教えて頂けました。
要介護認定の申請
申請の“前準備”はものすごく大変でした。
申請そのものは簡単です。要介護認定の申請用紙に必要事項を記入し、市役所(町村役場)の窓口に提出するだけ。
受理されると、2つの流れで審査が始まります。
- かかりつけ医の診察(意見書作成のための診察を受けます)
- 認定調査員による訪問調査(自宅で本人と対面して聞取り)※本人の普段の様子のメモや、 精密検査の結果のコピーがあれば、認定調査員に渡します。
「かかりつけ医の意見書」と、「訪問調査の結果」が揃ったら、審査が行われます。
- コンピューターによる一次判定
- 介護認定審査会による二次判定
2段階の審査を経て、認定結果が出されます。認定結果の通知は、申請から約30日以内に本人宛に郵送で届きます。
義母の介護認定結果は、「要介護1」と判定されました。
(注:前頭側頭型認知症=要介護1 という事ではありません。義母の場合、手足の筋力低下など複合要因がありました。状態には個人差があるため、要支援1、2と判定される事もあれば、要介護2以上の判定が出ることもあります。)
助けを求めながら手探りの日々
ここまで来るのに、本当にいろんなことがありました。なにしろ、義母は「前頭側頭型認知症」、初めて聞く病名。実際にどんなことが起こったか、これから何が起こるのか。
身近な方が同じ病気で悩む方もおられると思うので、いくらかでも参考になれば。後日、書ける範囲で綴っていきます。
【追記】その後、疲弊と困惑の約2年。医師も私達も手を尽くしてきましたが、思いもよらない展開に。前頭葉の萎縮に加えて、他の要因もあるのだろうか。
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